弾性物体モデル
Elastic Object Modeling
「弾性物体モデル」の研究は、1994年ごろから始まり、
今までに行った研究の中ではもっとも長く続いています。
当時、物理法則に基づいてモデリングすることによりリアルな運動アニメーションを生成する手法が
流行っており、この方法を、リアルタイムの対話アプリケーションへ応用するのがテーマでした。
弾性物体は、質点とばねの組み合わせた「質点-ばねモデル」で表現し、
モデルの運動はオイラー法と呼ばれる数値積分的解法により生成する方法を用いました。
この組み合わせは、比較的高速に計算ができるためリアルタイム処理に適しており、
単純なプログラムで実現できるという利点があるのですが、
弾性運動が激しくなると、物体モデルの形状が破綻してしまうという致命的な問題がありました。
そこで研究の第一期(1994~1997)では、弾性の最小要素であるばねの弾性特性を、
単純な比例弾性から剛性と弾性の両方をもつものに改良したばねのモデルを考案しました。
これは上記の問題を著しく改善しましたが、
基本的には剛性を高めて物体の変形を抑えるという処置だったために、
弾性定数の小さい柔らかい物体を表現するのが苦手でした。
研究の第二期(1997~2000)では、質点-ばねモデルにおいて弾性要素であるばねを体積的な弾性要素(弾性体積素)へ拡張した
「局所形状保持モデル」を考案しました。
このモデルは、物体の局所的形状である弾性体積素(プリミティブ)の形状を保持するように弾性力を定義したもので、
質点-ばねモデルの簡便さと有限要素法の適正な弾性力定義の両方の利点を兼ね備えています。
第三期(2000~2003)は、弾性要素の数を削減することにより、弾性運動の計算量を積極的に高速化するというものです。
弾性物体の表面から中心部にかけて、弾性要素の大きさを徐々に大きくしていきます
(「グラデーションモデル」と呼びます)。
これにより物体の表面部分では細かい要素による詳細な変形が実現でき、
物体内部では、大きい要素による計算量の少ない大まかな運動計算がなされます。
現在の第四期(2003~)のテーマは、グラデーションモデルの切断操作への対応です。
グラデーションの配置を切断の状態に応じて動的に変化させる機能を実現します。
今後はこの弾性物体モデルを用いた実用的なアプリケーション開発へ研究内容をシフトしていく予定です。
プログラムコード
Source Code
開発プラットフォーム別全ファイル(上記ソースコードを含んでいます)
* Mesa 3D と freeGLUT
をインストールする必要があります。
** DirectX 9.0b SDK をインストールする必要があります。
実行ファイルのみ
マニピュレータはマウスドラッグで操作できます。
* Windows 版の実行には freeglut.dll が必要です。
論文等
Publication
第一期
- 仮想弾性物体の対話操作のためのモデル化と実現
- 宮崎慎也, 安田孝美, 横井茂樹, 鳥脇純一郎
電子情報通信学会論文誌, J79-A,11, pp. 1919-1926, 1996.11
- Modelling and Implementation of Elastic Object Manipulation in Virtual Space
- Miyazaki S, Yasuda T, Yokoi S, Toriwaki J
Electronics and Communications in Japan Part 3: Fundamental Electronic Science, pp.1919-1926, 1998.1
- A Study of Virtual Manipulation of Elastic Objects
- Miyazaki S, Yasuda T, Yokoi S, Toriwaki J
Computer Graphics: Developments in Virtual Environments (Proc. Computer Graphics International'95), Leeds, pp.381-391, 1995.7
- A Study of Virtual Manipulation of Elastic Objects with Destruction
- Miyazaki S, Ueno J, Yasuda T, Yokoi S, Toriwaki J
Proc. IEEE International Workshop on Robot and Human Communication '96, Tsukuba, pp.26-31, 1996.11
第二期
- 局所形状保持に基づく仮想弾性物体モデルの提案
- 宮崎慎也, 吉田俊介, 安田孝美, 横井茂樹
電子情報通信学会論文誌, J82-A,7, pp. 1148-1155, 1999.7
- A Deformable Object Model for Virtual Manipulation Based on Maintaining Local Shapes
- Miyazaki S, Hasegawa J, Yasuda, T, Yokoi S
Proc. SCI2001, Orlando, 2001.7
人体モデリング応用
- 弾性骨格筋モデルに基づく組織変形と人体動作生成シミュレーション
- 稲葉洋, 瀧剛志, 宮崎慎也, 長谷川純一, 鳥脇純一郎
日本VR学会論文誌, 10, 4, pp.619-626, 2005.12
- Simulation of Human Motion - Using Tissues Represented by Elastic Object Models
- Inaba H, Miyazaki S, Taki T, Hasegawa J
Proc. SCI2001, Orlando, 2001.7
- Muscle-driven motion simulation based on deformable human model constructed from real anatomical slice data
- Inaba H, Miyazaki S, Hasegawa J
Proc. AMDO2002, Palma de Mallorca, 2002.11
第三期
- 弾性要素数削減に基づく弾性体モデルの運動計算の高速化
- 宮崎慎也, 山田雅之, 長谷川純一, 安田孝美, 横井茂樹
日本VR学会論文誌, 8, 1, pp.85-92, 2003.3
- Acceleration of Elastic Model's Motion Computation Based on Elastic Element Reduction
- Miyazaki S, Hasegawa J, Yasuda T, Yokoi S
Advances in Modelling, Animation and Rendering (Proc. Computer Graphics International 2002), Bradford, pp.239-246, 2002.7
インタラクション編
- 高速処理に適した弾性プリミティブによる仮想弾性物体とのリアルタイムインタラクション審査員特別賞
- 鈴木茂樹, 山田雅之, 宮崎慎也, 長谷川純一, 安田孝美, 横井茂樹
第18回NICOGRAPH論文コンテスト, pp.15-20, 2002.10
- Cooperative Elastic Object Manipulation Performed by Virtual Joystick Operation
- Suzuki S, Endo M, Yamada M, Miyazaki S, Hasegawa J, Yasuda T, Yokoi S
Proc. VSMM2004, 2004.11
第四期
- 弾性要素数削減モデルにおける切断操作に応じた要素配置の動的再構築
- 宮崎慎也, 遠藤守,山田雅之, 長谷川純一, 安田孝美, 横井茂樹
日本VR学会論文誌, 8, 3, pp.255-262, 2003.9
- A Deformable Fast Computation Elastic Model Based on Element Reduction and Reconstruction
- Miyazaki S, Endo M, Yamada M, Hasegawa J, Yasuda, T, Yokoi S
IEICE Transaction on Information and Systems, Vol.E88-D, No.5, pp.822-827, 2005.5.
- A Deformable Fast Computation Elastic Model Based on Element Reduction and Reconstruction
- Miyazaki S, Endo M, Yamada M, Hasegawa J, Yasuda T, Yokoi S
Proc. Cyber World 2004, Tokyo, 2004.11